(4)『抗菌性根充法』を考えつく過程
私の専門は口腔外科で、博士号を歯根尖切除術の研究でとりました。
その関連で専門外の根管治療の方法も動物実験で研究していました。
なぜならば研究中、一番苦慮したのは切除した根尖部が感染状態(根尖病巣)になることだったからです。
完全に根管内を充填したのにかかわらず根尖部が感染状態になることが、切片標本を顕微鏡で見て確認されたときは、本当に驚きました。
歯学部で教育された根管充填では、顕微鏡下で見ると感染状態になってしまうことがわかりましたが、どうしたら感染を予防できるかわかりませんでした。
完全滅菌した手術室なら可能でしょうが、動物実験室は一般診療所並みの滅菌状態ですので完全滅菌は困難でした。
当初はラバーダムをしていないからだと思いましたが、ラバーダムの有無は関係ありませんでした。
その後、歯根尖切除術の研究をしながら根管治療の研究も行い、やっと対策方法を考え出しました。
何度も試行錯誤して苦労して発見した対策方法が、今の根っこの治療に生かされて患者様の診療の役に立っています。
買主に捨てられて屠殺される予定の犬達で実験させていただきましたが、今その技術が生かされていることで犬達の魂も救われると思います。