2015年11月 2日
【院長ブログ】長期的な視点に立った治療
歯科では、痛みなどでお困りな方が初診でいらっしゃることが多いので、行ったその日にまず痛みを止めることを望まれる方が多いのです。しかし、医療は必ず治療とその予後の確認をしなければいけません。
歯も抜きっぱなしや治療途中は駄目で、治療後もちゃんと感染せずに治っているか確認をしなければなりませんし、長期的な視点に立った治療を行い、最後まで被せ物などを入れる必要があります。
緊急処置は致し方ありませんが、重症の場合は後日十分な検査をしたあとに最終的な被せ物などを話し合い、その治療に入らなくてはなりません。
お口の中を家に喩えると、奥歯は柱、前歯は屋根、歯茎や骨は地盤となります。地盤が固く、柱がしっかりし、屋根があってこそ家は成り立つのです。地盤を調べ、家の設計もしっかりやる必要があります。お口の中の家を保つためには、この地盤と柱と屋根がしっかり協調し、耐震強度を保っていなければなりません。また、メンテナンスも大切です。お口の中の健康を保つためには、虫歯、歯周病、かみ合わせ、全ての状態をよりよいものにしておくメンテナンスが必要不可欠なのです。
2015年10月24日
【院長ブログ】噛む力のコントロール
歯を一生涯保つためには、噛む力のコントロールが大切なのです。歯の平均寿命を見てみると、第一大臼歯、第二大臼歯が50歳前半ということで、一番短くなっています。もしも、歯を失う原因が細菌的要素だけならば、前歯から失われても良いはずなのですが、そうではありません。つまり、噛む力によるダメージでも、歯は失われるのです。
歯がどんどん失われていくと、最終的には上の歯と下の歯の噛み合う歯が交互になくなってしまう「すれちがい咬合」というものになってしまいます。上は奥歯だけ、下は前歯だけ残っているような状況です。こうなってしまうと歯をうしなうスピードを緩めることは難しくなってしまいます。
噛む力の負担能力が一番高いのは、第一大臼歯といわれる歯です。次に第二大臼歯です。しかし、噛む力の重心は、筋肉の付着位置により、第二大臼歯のやや後方あたりになっていることが多いようです。負担能力が弱い歯に強い力が加わりやすい環境になっているのです。外見上は掛かっている力は見えませんが、この時点での力のコントロールが大切です。
2015年10月 4日
【院長ブログ】親知らずは抜くべきか?
33年前、大学の口腔外科に入局した私は、先輩の先生方に「親知らずは抜くべきかどうかを」質問しました。(親知らずは、第3大臼歯のことで18~30歳くらいになって生えてきます。)残念ながら臨床的データーに基ずくお答えはありませんでした。そこで、私自身で経過を診てみようと右側上・下は抜歯して左側は残してみました。その後、31年経ってとうとう左上の親知らずは虫歯の為に抜歯になりました。その結果分かったことは、上の親知らずは抜かなければならなくなる確率が高いということです。
下の親知らずは、今までに約3000本ほど抜歯しましたが、3例ほど麻痺が出ました。幸い3か月ほどで麻痺は治りました。ですので、よほどの理由がない限り下の親知らずは、抜歯すべきではありません。下の親知らずには、様々な問題がおこる可能性がある為に事前に抜いてしまったほうが良いという安易な考え方がありますが、それは誤りです。医療行為は安全第一に行うべきです。
親知らずを抜くと、もの凄く痛い!というイメージがあると思います。しかし私の場合、上の親知らずを約7000本抜きましたが、痛みを訴えた方は3名です。処置中は痛みもなく、約1秒くらいで簡単に抜けます。(ちなみに、下の親知らずは、実際顔が腫れるような状態になるのはごく一部のものです。)