2008年3月16日
燃えつき症候群
おたようございます、Dr.森嶋です。
今回は燃えつき症候群に関して書かせていただきます。
燃えつき症候群とは、持続的な職務上ストレスに起因する衰弱状態により、意欲喪失と情緒荒廃、疾病に対する抵抗力の低下、対人関係の親密さ減弱、人生に対する慢性的不満と悲観、職務上能率低下と職務怠慢をもたらす症候群のことです。
燃えつき症候群は、長期間にわたり人に援助する過程で、心的エネルギーがたえず過度に要求され枯渇して起こります。
ですから、燃えつき症候群にたいする積極的なメンタルヘルスは、心的エネルギーを高めることです。方法は多種・多様あります。私は行動科学の観点からいろいろ取り組んでいますが、その一部を述べてみますと、とにかく睡眠時間を確保します。そのためテレビは見ません。歯科診療が大好きですので仕事はストレスになりませんが、材料・器具はいいものを揃えて快適な診療をするようにしています。プラス思考の本や映画しか見ないようにしています。時間があるとストレッチングや呼吸法を行っています。・・・・・。
患者様から、以前の歯科医院では院長先生が乱暴な口調で従業員を叱っていたという御話をお聞きしました。大変残念なことです。いい雰囲気の職場作りも院長の責務です。医療環境が激しいのはわかりますが、そのことを理由に従業員や患者様に対する思いやりが無くなっていいわけではありません。歯科医院の雰囲気が悪くなりますと、従業員が燃えつき症候群に罹って職務上能率低下と職務怠慢をもたらしかねません。院長自らが率先して積極的にメンタルヘルスに取り組むべきだと思います。
森嶋歯科医院では診療の合間の時間があるとき、患者様に診療以外のことですが、積極的なメンタルヘルスに関してお話させて頂いています。私の行動科学の知識が、少しでも患者様のお役に立てることを願っています。
2008年3月13日
術後性頬部嚢胞
おはようございます、Dr.森嶋です。
今回は、インプラント手術に関連して「術後性頬部嚢胞」に関して書かせていただきます。
上顎洞手術後数年から10数年を経て上顎洞内に袋(嚢胞)が発生し、頬部の腫張や疼痛を起こして来る場合があります。嚢胞は1つのことも2つ以上のこともあります。この嚢胞に感染が起こった場合に症状が現れてくることが多く、頬部の痛みと腫れとして始まり、さらに大きくなると、歯痛、涙が流れる、視力低下、複視、眼球突出など眼に関する症状も現れてきます。
このような場合には、CTスキャンを行うと診断がつきます。
治療は、急性症状に対しては、頬部(犬歯窩)から針を刺して排膿を行い、鎮痛剤、抗生剤の投与によって症状を和らげることができますが、根本的には、内視鏡を用いて鼻腔と嚢胞との間の閉鎖部分を開放し、排泄路をつくる手術が必要です。
上顎のインプラント手術に関するセカンドオピニオンを希望される患者様が来院されましたが、某歯科医院で上顎洞底部の骨の長さが充分でないためにサイナスリフトを行うことに関する相談でした。
この患者様の場合は6ミリのインプラントが可能ですので、上顎結節部に10ミリのインプラントを追加してサイナスリフトを行わない方法もあることを御説明しました。人口骨や移植骨を挿入して挙上し、上顎粘膜を損傷した場合、その後上顎洞炎を続発することがあります。その治療は大きな外科処置が必要ですし、その手術後に術後性頬部嚢胞のため10年に1回、上顎洞の再手術をしなければならない危険性があります。その危険性があるために、森嶋歯科医院ではできるかぎりサイナスリフトは行いません。
2008年3月 9日
入れ歯ノイローゼ(歯を抜かれて総入れ歯になる恐怖)
おはようございます、Dr.森嶋です。今回は、25年前の私の体験談を書かせていただきます。
お読みの方は、入れ歯になりますと精神的にも老化することを知っていますか。歯を残すことの大切さには、入れ歯にならずに精神的老化現象に歯止めをかけることも含まれているんです。
さて、私の体験談ですが、口腔外科の医局時代に某精神病院の歯科に派遣されて短期間勤務したことがあります。
多くの患者様が、口腔内の衛生管理が難しく虫歯になりやすい状態でした。いくら虫歯の治療をしてもまたそこに虫歯ができて歯がどんどんだめなっていく患者様が大半でした。残念でしたが歯を抜いて入れ歯にする治療が主でした。入れ歯になった患者様は、無気力になりがちでますますお口の手入れができなくなり、短期間で総入れ歯になりました。精神科の医師に総入れ歯になるとノイローゼ状態が悪化する(入れ歯ノイローゼ=歯を抜かれて総入れ歯になる恐怖がノイローゼ状態にする)と言われていましたが、いざ自分の患者様が総入れ歯(総義歯)になり、ノイローゼになることに直面しますと、安易に歯を抜いて入れ歯にすることに疑問を感じました。このことで歯を残す技術の修練に拍車がかかりました。
また、口腔外科が専門でしたので、精神病で苦しんでいる患者様が受け入れられる入れ歯を作成することは非常に困難でした。困難な入れ歯作成を模索しているうちに総義歯の大家・桜井先生と出会うことができました。先生の教えを受けることができ、精神病で苦しんでいる患者様が受け入れられる入れ歯を作成することに成功して、現在の入れ歯があります。
今振り返ってみますと某精神病院の歯科に勤務して得難い経験ができ飛躍的に技術が向上しましたが、当時は左遷された悲哀に荒れた心境でした。フランクルは、「苦悩により如何に高められし」と人生の苦悩を自己向上の機会と捉えていますが、私みたいな凡人は運がよくて偶然に高められた思っています。
2008年3月 6日
神経麻痺(下顎神経)
こんにちは、Dr.森嶋です。
森嶋歯科医院では、下の親知らずの抜歯はお勧めしていません。理由は、神経麻痺をおこす可能性があるからです。
神経麻痺は、正確には下顎神経麻痺といいます。下顎神経(三叉神経第3枝)が麻痺しますと、下口唇などの知覚等に関与していますので、下口唇に麻痺感が出できます。
患者様が下口唇の麻痺感を相談に来られました。術後3年経ったそうですが、麻痺感がまだあるそうです。執刀医は、「今まで麻痺が出ないから、絶対に安全だ」と言ったそうです。 わたしの場合は、25年間に約3000本抜歯して3名の方に麻痺が出ました。3名ともに3カ月以内に麻痺感は消失して治りました。麻痺の可能性がありますので、伝達麻酔をできるかぎりしません。また、骨への損傷を避けるために歯を細かく分割して抜き、暴力的に力任せに抜きません。それだけ注意しても麻痺は起こるものです。
歯科治療には、偶発事故の可能性があります。患者様の安全を最優先に診療するように常に心がけています。
2008年3月 2日
ロゴセラピー
おはようございます、Dr.森嶋です。
今回は、私が尊敬し多大に影響を受けたフランクル先生が始められましたロゴセラピーに関して書かせていただきます。
先日、歯科恐怖症の患者様が親知らずを抜くために来院されました。歯科恐怖症の彼女を精神的に援助するためにロゴセラピーの手法を用いました。ロゴセラピーは精神的に苦しんでいる人々のため、人生の意味を重視した治療法だと言えます。歯科恐怖症の患者様を精神的に援助するために、ロゴセラピーにおける主な原則「ソクラテスの対話」を用いて、カウンセリング時に来院された意味=意思を強化しています。
彼女は、抜歯前に手が震えて口をゆすぐ時コップを落としそうになりました。顔色は緊張のあまり青くなっています。こんな時は、ロゴセラピーを応用して手術しています。私は、ユーモアを即時対応しながら会話に織り込んでいき患者様の心を私に向けさせて、患者様の心を治療から逸らせる「距離化」を図ります。口腔外科が専門ですので、麻酔は何時したのかわかりません。抜歯は一瞬で行います。そして、止血剤を使用しますので出血しません。彼女は、笑顔で御帰りになりました。
ロゴセラピーの創始者・フランクルは著書「夜と霧」の中で、援助する側の「内的な力」の重要性を述べています。私は歯科の仕事が好きで天職だと感謝していますが、ますます患者様を援助する内的な力を強めたく願います。