歯が原因じゃなくても歯が痛くなるものを、非歯原性疼痛と言います。
ここに代表的なものを列記します。
・上顎洞炎
頬部から眼窩下部全体に圧迫感を伴う鈍痛があり、上顎小臼歯部から大臼歯部にかけて鈍痛を訴える。多数歯に軽度の打診痛が認められるが、患歯を特定する歯科的異常所見は認められない。
「最近、風邪を引いた。」「鼻水が出る。鼻がつまる。」
「頭を下に向けると痛みが悪化する。」「上あごを押すと痛む」「歯を叩くとひびく」
1. 鈍痛、うずくなどの痛みが上顎臼歯部の数歯に生じる。
2. 鼻粘膜は非常に敏感で炎症や刺激により、鈍い灼熱痛を引き起こす。
3. 数歯に打診痛を生じる。
4. 上顎臼歯に直接波及して歯根膜炎を引き起こすこともある。
5. 両側もしくは片側。
6. 眼窩下部に圧迫感、圧痛を感じる。
7. 頭を下に向けると疼痛が増強される。
8. 当該上顎同前壁を圧迫すると痛みがある。
9. 上顎洞炎、上部呼吸器感染の既往がある。
10. 鼻症状(鼻水、鼻づまり)を伴う。
・ニューロパシックペイン(神経因性歯痛)
上顎犬歯、小臼歯部の1歯に持続性の鈍痛を訴えるが歯科的異常所見は認められない。 打診痛は認められず、冷水痛、温水痛、咬合時痛は認められない。疼痛は1日中ほぼ一定で不変に存在する。食事中や夜間就寝時には気にならない。
1. 痛みは歯や歯の周り(通常、上顎犬歯、小臼歯)に感じる。
2. 歯肉、粘膜が過敏化(アロディニア)軽く触ってもかなり痛む。
3. 疼痛は持続性で、灼熱痛である。
4. 疼痛は一日中ほぼ一定で不変に存在する。
食事中や夜間就寝時には気にならない。
5. 疼痛は4ヶ月以上持続する。
6. さまざまな神経トリガーポイントがある。
7. 三叉神経痛
o ・片側性で、強く、刺すような痛みで、ショック的で発作性である。
o ・比較的弱い刺激をトリガーポイントに加えると誘発される。
o ・トリガーポイントへの麻酔で疼痛発作を抑えられる。
8. 舌咽神経痛
9. 1次求心線維の部分的損傷による痛覚過敏、灼熱痛。
10. 外傷性神経痛:根管治療後疼痛⇒全体の5%。インプラント後疼痛⇒全体の17%。
・歯髄神経を切断、障害後の痛み。
抜髄や抜歯後いつまで経ってもジーンとした痛みが消えない⇒幻歯痛 この際、打診により痛みは増強されない。
・CRPS(Complex regional pain syndrome)
度重なる神経障害処置は、知覚神経の伝達異常を発生させ、悪化させる。 すなわち神経因性疼痛を生み、増悪させる。さらにそれと同時に、交感神経系が深く関与した血流異常、浮腫、粘膜異常、骨代謝異常などの組織の異栄養が生じる病態が発生する。
・筋・筋膜性歯痛(筋トリガーポイントによる歯痛)
上顎臼歯部に持続性の鈍痛を訴える。患歯は特定できず、打診痛、冷水痛、温水痛、咬合時痛等も認められない。疼痛は1日中あるが、食事中や夜間就寝時には気にならない。食事の後に悪化する。他に歯科的異常所見は認められない。
1. 非拍動性の持続性鈍痛
2. 患歯の特定が困難
3. 当該筋の活動(咀嚼、噛締め等)によって疼痛が増強される。肩こり、
頭痛を伴うことがある。
4. 当該筋の麻酔、スプレー&ストレッチによって歯痛が減少する。
5. 食事の後に悪化する。
6. 側頭筋のトリガーポイント
前方部(こめかみ)⇒上顎前歯部 中心部⇒上顎34部
後方部(耳斜め前)⇒上顎大臼歯部
7. 咬筋部のトリガーポイント
上部⇒上顎大臼歯部 下部⇒下顎大臼歯部
下顎角部⇒こめかみ、眼窩上部、下顎骨体。
・神経血管性頭痛による歯痛(偏頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛。)
上顎臼歯部に突然、拍動性の激痛が生じる。歯痛に続いて、頭痛が起こる。頭痛は拍動性であったり、激烈であったりする。数十分から数時間続き、その間は食事もできないほどである。
しかし、頭痛の消失とともに歯痛も完全に消失し、その後の打診痛、冷水痛、温水痛、咬合痛等も認められない。その他、歯科的異常所見はない。
1. 疼痛は突発的に現れ、拍動性で、変化しやすく、歯髄炎に似ている。
2. 頭痛を伴うか、既往がある。
3. 毎月数回生じたり、何ヶ月、何年の単位で痛みが鎮静したり増強したりする。
4. 歯痛(大臼歯)の後に頭痛が続く。
5. 偏頭痛
o ・60%は片側性。残り40%は両側性。女性に多い。
o ・拍動性の強い痛み。体動により悪化する。日常生活を営めない。
o ・持続時間は4~72時間。
o ・光・音過敏が起こる。
o ・悪心・嘔吐が起こる。(他の頭痛との鑑別に重要)
o ・閃輝暗点などの視覚前兆をともなう場合もある。
o ・家族歴多い。
o ・発作中、暗い静かな場所で寝込む。
「顎が痛んでいる間は、頭にも規則的に石で叩かれているような痛みがある。」
「吐き気がする。」「明るいところやうるさいところで痛くなる。」
「体を動かすと痛い。」
・群発頭痛
上顎臼歯部に持続性の鈍痛を訴える。患歯は特定できず、打診痛、冷水痛、温水痛、咬合時痛等も認められない。疼痛は1日中あるが、食事中や夜間就寝時には気にならない。食事の後に悪化する。他に歯科的異常所見は認められない。
· ・上顎最後臼歯部の激痛を主訴とする場合が多い。
· ・片側性。
· ・第2大臼歯を虫歯にしてしまう。
· ・男性に多い。5~7:1
· ・20~40代で初発
· ・群発期と寛解期がある。(1~2年ごとに群発期がある)
· ・眼窩を中心に、上顎臼歯部および側頭部。
· ・焼け火箸を突っ込まれるような最大級の激痛
· ・発作中、じっとしていられずに歩き回る、床を転げ回る。
· ・患側に自律神経反応を伴う。流涙、鼻閉など
· ・睡眠中、疼痛発作で覚醒する。
· ・飲酒で必発!
· ・同じ周期、同じ季節、同じ時間に発症。
「O年ごとに痛む。」「治療しても変わらす、激しい痛みが続く。」
「痛くて眠れない。夜、痛くて目を覚ます。」「酒を飲むと痛くなる」
「痛い側に、汗、涙、鼻水がでる。」
緊張型頭痛
· ・ストレスに伴い反復発作性頭痛が発現。
· ・抑うつ、不安がよく見られる。
· ・軽度の光・音過敏症がある。
· ・頭痛が30分~7日間続く。
· ・頭痛は鈍く、持続性であるが、強度は日内変動する。
· ・圧迫あるいは締め付けられるような痛みと表現される。
· ・頭部周囲に両側性に存在
· ・頭痛は運動や飲酒で憎悪しない。
· ・夜間のかみしめ、片側咀嚼、全身的緊張による筋緊張による疼痛。
・頸性歯痛(頸神経の障害による歯痛)
1. 頚椎疾患が原因で口腔顔面領域に関連痛が誘発される。
2. 患者は、頸肩部の疼痛を単に肩こりと訴える場合が多い。
3. 頸部筋肉が原因のものと、ヘルニア、外傷などによる頸部神経の圧迫により起こる。
・心臓性歯痛(狭心症、心筋梗塞)
1. 胸部痛、左腕、左頸部痛が生じるとともに、左側の歯痛や顎痛が生じる。
2. 18%の患者さんは、歯痛、顎痛だけを感じる。
3. ストレスや過剰な運動で痛みが悪化する。
・ウィルス性疾患による歯痛(帯状疱疹)
1. 三叉神経第一枝か、目の周りに出現する。下顎は5%程度。
2. 初めは咬合痛などが存在するが3~4日待つと、神経部位に水疱が現れる。
・非定型歯痛(原因不明の歯痛)
1. 最初の頃は三叉神経痛と似た、鋭い電撃痛のような痛みとして現れるが、時間の経過とともに、鈍い四方に広がるような痛みに変わり、患者は痛む歯を特定できなくなる。
2. トリガーポイントはない。
3. 局所麻酔で完全に除痛できない。
4. 幻肢痛と似ている。
心因性歯痛(疼痛障害としての歯痛、虚言癖、精神病)
5. 上記の診断以外のもの。
6. 多数歯がしばしば痛みの部位と特徴を変えると訴える。
7. 通常の疼痛特徴とかけはなれている。
8. 歯科治療に反応しなかったり、予測できない反応がある。
9. 患者は慢性疼痛行動を持っている。