【院長ブログ】最も発生頻度が高い舌癌に関して
こんにちは、Dr.森嶋です。
今回は、口腔癌(舌、口底、頬粘膜、上下歯肉、硬口蓋の癌)のうち最も発生頻度が高いとされている舌癌(舌がん)に関して書かせていただきます。
解剖学的に舌は舌尖、舌背、舌縁、舌根、舌下面に分けられます。このうち舌根は中咽頭に分類され、舌の前方3分の2の可動部がいわゆるoral tongueです。舌癌の大部分(90%)は舌縁に発生し、残りが舌尖、舌下面、舌背に発生します。早期舌癌の肉眼的所見は外向発育型、内向浸潤型、表在型の3群に分けられます。
舌癌の予後および治療後の形態、機能を規定する要素の一つとして、舌癌の舌周囲組織への進展度があげられます。
舌縁部に発生した癌は、舌の前後方向に進展し、さらに側方口底から下顎歯肉、下顎骨へ進展します。後方では舌根、前口蓋弓、扁桃窩、中咽頭側壁、副咽頭腔へと進みます。また下方深部へ進行したものでは舌骨上筋群に浸潤、舌の運動性が乏しくなります。したがって、進展したケースでは初診時、舌の運動障害、開口障害がみられます。
舌はリンパ管、血管がともに豊富であり、舌癌はこのリンパ流に沿って、リンパ節へと転移を起こしやすいのです。初診時の転移リンパ節の有無は、一次治療後の予後に関与する重要な因子であり、初診時転移リンパ節がなくても、転移リンパ節の出現に注意を払った経過観察が必要です。
原因、誘因としては喫煙、飲酒、歯列不正、う歯、不適合義歯、口腔の不衛生などが考えられます。喫煙飲酒歴の長い患者さんでは、上部消化管に重複して癌を有することが少なからずあり、併せて内視鏡等による検査が行われます。